直近5試合での失点は4。うち3試合はクリーンシートで抑えた。
5試合でゴールマウスを守ったのは、GK1 飯田雅浩だ。
青森山田高校時代には、第97回全国高校サッカー選手権大会で優勝を果たした。準決勝でのPKストップは、青森県民の中でも記憶に残っているであろう。
大学卒業後は東京ヴェルディに加入。加入一年目の昨年はなかなか出場機会を掴めず、今年から八戸へ武者修行に来た。
しかし、甘くはなかった。今シーズンの出場はわずか9試合。
もがき苦しむシーズンの中、覚醒の兆しが見える。
守護神の風格を纏い始めた、八戸の若きGK 飯田の想いに迫る。
飯田 雅浩/Masahiro IIDA
■ポジション:GK
■生年月日:2000年10月5日
■出身地:東京都
■身長/体重:184cm/85kg
■経歴:高三SC-杉並シーダーズ-東京ヴェルディジュニア-東京ヴェルディジュニアユース-青森山田中-青森山田高-国士舘大-東京ヴェルディ
Instagram:@_m10.5
note:https://note.com/masahiro1005iida/all
-今シーズン、東京ヴェルディからの期限付き移籍で加入しました。どのような思いで決断したのでしょうか。
(飯田)去年からJ3の順位や結果は気にしていて、ヴァンラーレは最初調子よくなかったと思いますけど最終的に7位。資金が潤沢にあるクラブではないかもしれないですけど、その分、泥臭さ、貪欲さというところが学べると思いましたし、そこが自分には必要だと思っていました。高校時代は青森にいたので、青森県に来ること自体、抵抗がなかった。チーム関係者とも話をして、自分の特徴を出せるチームだなと感じたので、ヴァンラーレを選びました。もちろん上のカテゴリーでやりたい気持ちもありましたけど、まずは経験を積むということを考えて、今でもヴァンラーレを選んで本当によかったと思っています。
-今シーズンここまでを振り返り、どのように感じていますか。
(飯田)チームとしては開幕から大敗のスタートで、序盤は最下位も経験するようなシーズンですけど、少しずつ石さん(石﨑信弘監督)の求めるサッカーを体現できるようになってきて、少しずつ結果も出るようになってきた。簡単なシーズンではないですけど、残り4試合でプレーオフに行けるかどうかのラインにいると思うので、今まで34試合やってきた自分たちや応援してくれる人たちの頑張りを無駄にしないように、残り4試合、魂込めて闘いたいと思います。
-開幕スタメンの大宮戦は4失点で大敗。当時の心境はいかがでしたか。
(飯田)自分自身もJリーグでいえばデビュー戦で、もちろん気合も入っていましたし、覚悟持って八戸に来て開幕戦で1-4で大敗したので、今までやってきたことの足りなさも実感しましたし、プロは甘くないなということを感じました。どこかで見返したいなという気持ちはずっと持っていたけど、なかなかリーグ戦では出場機会を掴めずにいた。でも、一つ伸びきった鼻を折ってもらえて、自分自身を見つめ直すきっかけになったと思います。
-その中、今シーズンは上位カテゴリーのチームとの試合も出場していました。
(飯田)ルヴァン杯鹿島戦は、やっぱりJ1クラブとやれるということは自分にとってもチームにとっても大きなことだと思いましたし、そこで自分を信用して使ってくれた石さんには感謝しかないです。たくさんの方の前でプレーするというのは、やっぱりいいな、試合に出たいなというのは、その時さらに強く思いました。
天皇杯は2回戦で横浜FCが相手だったんですけど、J2で上位にいるチームだったので、たくさん強いところとやらせてもらえることが嬉しかった。出場が少なかったですが、ネガティブな感情は全くなくて、強いところとできる嬉しさを感じていました。そこで良いプレーはいくつかできましたけど、チームが勝てていない。それが自分の評価にもつながると思うので、そこは悔しい思いをしていました。
-開幕戦以降、リーグ戦での出場機会を掴めずにいました。試合に出られない時の心情はいかがでしたか。
(飯田)来た当初は、出て当然というか、出れないとまずいなというか、相応の自信を持っていたので、開幕戦以来リーグ戦に絡めていないというのは、焦りがなかったと言ったら嘘になります。それでも勝俉さん(GK13大西勝俉)のプレーであったり谷くん(GK25谷口裕介)のプレーであったり、日頃の練習から学べることがすごくありました。
ただ、本音で言えば、本当に苦しかったですね。
出場だけでなくメンバーも外れるときもありましたし、他のところにベクトルが向きそうなときも正直ありました。そこでなんとか辛抱強くやれたのはよかったですけど、本当に苦しかったですし、悔しかったですね。
相談するといっても自分自身が頑張るしかないので、今の現状を変えられるのは自分しかいないなと思って。いくら相談したり愚痴を言ったりしても変わんないので、そこは腹を括って、自分にベクトルを向けて、自分にやれることを全力でやろうと思っていました。
周りからも「なんで出てないんだ」とも言われましたけど、カテゴリーを落としたから出れるほどプロは甘くはない。チームで信頼を勝ち取らないと出られないですし、そういう厳しさはプロ2年目で知ることができました。
-大西選手、谷口選手、飯田選手。GK3人の雰囲気や関係性はいかがですか。
(飯田)これまでのサッカー人生で人として嫌なキーパーに会ったことがない。もちろん谷くんも勝俉さんもすごい良い人ですし、バランスもすごく良いなと思っていて。
経験があって落ち着きのある勝俉さんがいて、ムードメーカーで這い上がってきた谷くんがいて、自分で言うのは恥ずかしいですけどギラギラして負けん気の強い一番下がいるというのは、すごいバランスが取れているキーパー陣だなと思います。
ピッチ外の部分でも勝俉さんの家に招いていただいて、3人でご飯を食べることもあります。誕生日も祝ってもらったりとか。勝俉さんとは歳も10個離れているので、自分にはない考えや経験が言葉じゃなくても伝わってきます。
谷くんの影響も大きくて、谷くんとは一緒にいる時間が長い。練習でも最後までグラウンドに残って、一緒にジョギングもして、話すことも多い。去年までは練習が終わったらパッとあがって、パッと帰ってということが多かったんですけど、谷くんと会って、こんなサッカーと向き合ってる人いるんだ、こんなサッカー好きなんだと思いました。だって、2部練2日間やって、その次の日、1部練なのに午後ボール蹴るんですよ。どんだけサッカー好きなの!って。普段はおちゃらけているんですけど、サッカーに対して真面目なところは谷くんから学ぶことが多かったです。
-2人に伝えたいことはありますか。
(飯田)直接は言えないので、勝俉さんと谷くんに。二人の気持ちも背負って試合に出ているし、今までキーパー陣全員で積み上げてきた勝点を無駄にしないように、自分も覚悟を持って闘います。
直接は言えないから、小恥ずかしくて。(笑)
-出場機会が増えている中、自身のコンディションはいかがですか。
コンディションは急に今よくなったわけではなくて、日頃から準備してきていました。メンバー外の時でもその週の試合に出るようなスケジュールで動いていましたし、コンディションも準備の部分でも、試合に出始めたから何か変えたということはやっていないです。
-自身のプレーについてはどのように評価していますか。
シュートストップの部分はチームから求められている部分ではありますけど、3試合無失点も続けられたというところは、シュートを打たれていても最後まで体を投げ出してコースを限定してくれる選手がいたり、前線から追いかけてくれる選手がいたり、そういう全員で体を張ってゴールを守るということが出来ているからだと思う。自分がセーブした場面でもフリーで打たせている場面はほとんどない。少しでも寄せてプレッシャーを与えてコースを限定してくれているので、そこまで難しいセーブはまだないかなと思っています。
少しずつ試合にも慣れて、まだまだ余裕は足りないかもしれないですけど、自分のやれることをやって、止めれる場所はしっかり止めようと思っているので、それが派手ではないかもしれないですが出てきているのかなと思います。
-選手として目指すところは。
まずはヴァンラーレで最高の結果を出すこと、そしてヴェルディに戻った時に活躍するというのが、一番の目標です。
長期的に見れば、息の長い選手になりたい。何歳までこの仕事を続けられるかわからないですけど、できるだけ長くやりたいと思っていますし、長くやるためには結果を出すことはもちろんですけど、身体のケアや日々の積み重ねが出ると思うので、そういうところも大切にしています。
-讃岐戦に向けた意気込みをお願いします。
(飯田)勝つ。内容とか自分のプレーとか言っている場合ではない。まずチームとして讃岐戦に勝つ。それがプレーオフ進出に繋がっていくと思いますし、勝点2差になっていますけど、1試合1試合を戦わないとプレーオフは見えてこないと思うので。次の試合勝つ。それだけです。
-ファン・サポーターへのメッセージ
(飯田)残りホーム戦も2試合なのでたくさんの方に来ていただきたいですし、それが選手のモチベーションにも繋がります。
八戸という地で一番盛り上がる場所は、ヴァンラーレの試合であるべきだと思うので、僕は。それにやっぱりたくさんの方の前で試合をするということは、サッカー選手にとっての何よりも嬉しいことなので。
少し寒いかもしれないですが、熱い試合をするので、たくさんの方に観に来ていただければなと思います。